不倫の示談書合意書を作成する際に決めておく内容の完全ガイド
不倫の示談書を作成する際に決めておく内容の完全ガイド
不倫問題が発覚した際、当事者間でのトラブルを適切に解決し、将来の紛争を防ぐために「示談書」の作成は非常に重要です。本記事では、行政書士事務所の専門知識をもとに、3つの主要なパターン別に示談書で決めておくべき内容について詳しく解説します。
目次
求償権の放棄について
求償権とは
不倫をした場合、配偶者と不倫相手の両方が慰謝料を支払う義務を負います(連帯責任)。被害者はどちらに対しても慰謝料を請求することができますが、例えば不倫相手が全額を支払った場合、不倫相手は配偶者に対してその一部を請求する権利(求償権)を持ちます。
求償権放棄の重要性
- 二次トラブルの防止:示談成立後に当事者間での金銭的なやり取りが発生することを防ぎます
- 完全解決の確保:一度の示談ですべての請求関係を終了させることができます
- 家計への影響軽減:特に離婚しない場合、求償により家計に二重の負担が生じることを避けられます
実務的な考慮:特に配偶者と離婚せずに夫婦関係を継続する場合、不倫相手から配偶者への求償があると、実質的に同一家計に二重の負担が生じるため、求償権の放棄条項は非常に重要です。
示談書作成の重要性
示談書とは、当事者間の合意内容を書面にしたものであり、口約束だけでは後から「言った・言わない」のトラブルに発展する可能性があるため、書面で合意内容を明確に記録することが重要です。適切な示談書があることで、法的な証拠としての効力も発揮します。
パターン1: 被害者と不倫相手との示談書
配偶者を持つ被害者が、配偶者の不倫相手に対して作成する示談書
必須記載事項
- 当事者の特定
- 被害者(配偶者)の氏名・住所
- 不倫相手の氏名・住所
- 不倫をした配偶者の氏名(関係者として明記)
- 不貞行為の事実確認
- 不倫ではなく「不貞行為」という法的用語を使用し、具体的な期間、場所、回数を可能な限り特定
- 不倫相手が既婚者であることを知っていた事実の確認
- 不貞行為に対する謝罪文言
- 慰謝料の詳細
- 慰謝料の金額(一般的に50万円~300万円程度)
- 支払方法(一括払い・分割払い)
- 支払期限・振込先
- 分割払いの場合は各回の支払額と期日
- 接触禁止条項
- 配偶者との今後一切の接触禁止(電話、メール、面会その他の方法による接触の禁止)
- 配偶者の職場や自宅周辺への立ち入り禁止
- SNSでのつながりの削除・ブロック
- 守秘義務条項
- 不倫の事実や示談の内容について第三者への口外禁止
- SNSや掲示板への投稿禁止
- 職場での噂の流布禁止
- 違約金条項
- 示談書の内容に違反した場合のペナルティ金額の設定
- 接触禁止違反時の違約金
- 慰謝料未払い時の遅延損害金
- 清算条項
- 示談書記載事項以外に債権債務が存在しないことの確認
- 今後一切の慰謝料請求をしないことの確認
- 求償権の放棄
- 不倫当事者同士の連帯責任に基づく求償権の放棄条項
- 示談後に配偶者が不倫相手に対して求償することの禁止
- 将来的な内部求償トラブルの防止
注意点: 不倫をした配偶者と不倫相手は連帯責任を負うため、慰謝料の全額を回収したら、それ以上の金額を受け取る権利はありません。一方からの回収状況を考慮して金額設定を行いましょう。
パターン2: 被害者と配偶者間での示談書(夫婦間)
不倫された配偶者が、不倫をした配偶者との間で作成する示談書
必須記載事項
- 夫婦関係の特定
- 夫婦それぞれの氏名・住所
- 婚姻年月日
- 子どもの有無・年齢
- 不貞行為の詳細な事実確認
- 具体的に○○年〇月〇日、誰と、どこで、どのようにして不貞行為をしたという事実を認めて謝罪する内容
- 不貞行為の期間・頻度
- 不倫相手の特定
- 配偶者からの深謝と反省の意思表示
- 今後の夫婦関係について
- 婚姻関係の継続または離婚についての合意
- 夫婦関係修復への取り組み方針
- 家庭での役割分担の見直し
- 慰謝料・経済的取り決め
- 夫婦間での慰謝料支払いの有無・金額
- 家計管理方法の変更
- 小遣いや支出管理の制限
- 不倫で使った費用の返還
- 行動制限・監視条項
- 不倫相手との完全な関係断絶
- 帰宅時間の制限・報告義務
- スマートフォンの開示義務
- 位置情報の共有
- 飲み会や出張時の報告義務
- 再発防止策
- 不倫が再発した場合のペナルティとして違約金の設定
- 再発時の離婚条件(慰謝料、親権、財産分与等)
- カウンセリング受講の義務
- 離婚に関する取り決め
- 再び不倫をした場合には離婚協議に応じることの約束
- 離婚時の親権者の指定
- 離婚時の財産分与方法
- 離婚時の養育費の額
- 求償権の放棄
- 配偶者が不倫相手に慰謝料を支払った場合の求償権放棄
- 夫婦間での経済的清算の完了確認
- 第三者への追加請求権の放棄
夫婦間契約の特殊性: 以前は民法により夫婦間の契約はいつでも取り消しができるとされていましたが、現在では一定の条件下で有効とされています。ただし、過度に相手の自由を制限する内容は無効となる可能性があります。
パターン3: ダブル不倫で4者での示談書
既婚者同士の不倫(ダブル不倫)における4当事者間の示談書
当事者の構成
- 甲:A夫婦の被害者配偶者
- 乙:A夫婦の不倫当事者
- 丙:B夫婦の被害者配偶者
- 丁:B夫婦の不倫当事者
必須記載事項
- 4当事者の特定
- 4者間和解の当事者は4名すべての氏名・住所を明記
- 各々の夫婦関係と不倫関係の整理
- それぞれの立場の明確化
- 不貞行為の相互確認
- 乙と丁による不貞行為の事実確認
- 不貞行為の期間・場所・状況
- 双方からの謝罪文言
- 慰謝料の相殺・支払い
- お互いに慰謝料を払わないとする「ゼロ和解」が一般的
- 支払いが発生する場合の金額と方法
- 各夫婦間での経済的調整方法
- 今後の関係について
- 乙と丁の完全な関係断絶
- 4者間での一切の接触禁止
- 各夫婦の婚姻関係継続または離婚の方針
- 秘密保持条項
- 4人がそれぞれ不倫に関する情報を漏洩しないとする秘密保持条項
- 職場や近隣住民への口外禁止
- SNSや掲示板への投稿禁止
- 違約条項
- 関係再開時の違約金
- 秘密保持違反時のペナルティ
- 4者間での連帯責任の有無
- 清算条項
- 4者間でのすべての債権債務の清算
- 将来にわたる請求権の放棄
- 求償権の放棄
- 各夫婦間での求償権の相互放棄
- 不倫当事者同士の求償権放棄
- 4者間での連帯責任に基づく内部求償の禁止
ダブル不倫の特殊性: 双方の夫婦が離婚せず同一家計での生活を続ける場合などは双方支払なしとして和解を成立させることができる場合が多く、実際の損害の発生状況を慎重に検討する必要があります。
示談書作成時の共通注意事項
項目 | 注意点 | 対策 |
---|---|---|
記載内容 | 誰が読んでも一つの解釈しかできないよう、端的な表現で記載 | 曖昧な表現を避け、具体的数値や期限を明記 |
署名・押印 | 示談の当事者本人の署名・捺印が必要 | 本人確認を徹底し、実印または認印を使用 |
公正証書化 | 公正証書にすることで、強制執行が可能 | 重要な案件では公証役場での公正証書作成を検討 |
保管 | 原本の紛失リスク | 関係者全員が1通ずつ保管し、コピーも準備 |
求償権の放棄 | 不倫当事者間で発生する内部求償によるトラブル | 求償権放棄条項を設けて二次トラブルを防止 |
専門家相談 | 書類作成は行政書士、交渉代理は弁護士の業務 | 案件に応じて適切な専門家を選択 |
行政書士からのアドバイス
- 示談書は自分で作成することも可能ですが、確実に法的に有効な示談書を作ることは難しいため、専門家への相談をお勧めします。
- 不倫の状況や示談の条件はそれぞれのケースで異なるため、テンプレートをそのまま流用することは基本的にはおすすめできません。
- 慰謝料の相場や法的有効性について、事前に専門家の助言を求めることが重要です。
- 感情的になりがちな不倫問題では、冷静な第三者の視点が必要不可欠です。
- 行政書士は示談書の作成を専門的にサポートできますが、相手方との交渉は弁護士の業務となりますのでご注意ください。
- 求償権の放棄条項は特に重要で、将来の二次トラブルを防ぐために必ず検討すべき項目です。
無効となるケースに注意:
- 誓約書の内容が公序良俗に反する場合
- 相手をだまして示談書にサインさせたり、脅迫や暴行をしたりして示談書を書かせた場合
- 法外な違約金や過度な行動制限を設定した場合
- 実現不可能な条件を設定した場合
まとめ
不倫の示談書作成は、将来のトラブルを防ぐ重要な法的手続きです。それぞれのパターンに応じて適切な内容を盛り込み、法的に有効な書面を作成することで、当事者全員が安心して新しいスタートを切ることができます。</p p>不倫の示談書作成は、将来のトラブルを防ぐ重要な法的手続きです。それぞれのパターンに応じて適切な内容を盛り込み、法的に有効な書面を作成することで、当事者全員が安心して新しいスタートを切ることができます。
複雑な案件や高額な慰謝料が関わる場合は、必ず専門の行政書士や弁護士にご相談ください。
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