AIが作る示談書・合意書は危険?ChatGPTで法律文書を作成する6つの落とし穴と専門家に任せるべき理由を行政書士が徹底解説
AIが作る示談書・合意書は危険?ChatGPTで法律文書を作成する6つの落とし穴と専門家に任せるべき理由を行政書士が徹底解説
「ChatGPTで示談書を作れば費用ゼロで済むのでは?」——そう考える方が増えています。しかし、AIが生成する法律文書には、法律の専門家でなければ気づけない深刻な落とし穴が数多く潜んでいます。
本記事では、AI生成の示談書・合意書が抱える具体的なリスクと、専門家に任せるべき理由を解説します。
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目次
AI生成の示談書が「有効」でも安心できない理由
日本の民法では契約方式自由の原則(民法522条2項)が定められており、示談書の作成手段そのものは法的有効性に直接影響しません。つまり、AIが生成した示談書であっても、当事者双方が内容を理解し自由な意思で署名・押印すれば、和解契約(民法695条)として成立します。
しかし、法的に「成立する」ことと「実務上問題がない」ことはまったく別の話です。AIが生成する法律文書の最大のリスクは、一見すると形式的に整っているように見えるが、内容に致命的な欠陥を含むという点にあります。
重要:AIサービスの利用規約では、出力された情報の正確性・合法性は保証されないと明記されているのが一般的です。AI生成文書に基づいて法的トラブルが生じた場合、その責任はすべて利用者自身が負うことになります。
専門家に依頼した場合は、その専門家が職業的責任を負いますが、AI利用ではそうしたセーフティネットは存在しません。「無料で作れる」というメリットの裏には、こうした大きなリスクが隠れています。
AIが生成する示談書に潜む6つの落とし穴
ここでは、AIが生成する示談書・合意書で特にリスクが高い6つのポイントを解説します。
落とし穴① 清算条項の設計ミス
示談書の核心ともいえるのが清算条項です。「本件に関し、甲と乙の間には本示談書に定めるもののほか何らの債権債務がないことを確認する」という条項において、「本件に関し」の一文があるかないかで法的効果が大きく異なります。
この文言がなければ、示談対象とは無関係の債権債務まで清算されてしまい、別の貸借関係の返還請求権が消滅する危険性があります。AIはこうした微妙な文言の違いがもたらす法的影響を適切に判断できません。
落とし穴② 強制執行力がない
私文書としての示談書には強制執行力がありません。つまり、相手方が示談金を支払わない場合、改めて裁判を起こして勝訴判決を得なければ差押えができないのです。
公正証書で作成し「強制執行認諾文言」を付記すれば、裁判なしに差押えが可能になります(民事執行法22条5号)。特に分割払いの合意では将来の不払いリスクが高く、公正証書化が不可欠ですが、AIが生成するテンプレートではこの点がほぼ考慮されません。
落とし穴③ 個別事情に応じた条項の欠落
示談書は案件の内容によって必要な条項が大きく異なります。AIはテンプレート的な内容を出力することが多く、以下のような個別事情に対応した条項を自発的に盛り込めません。
案件ごとに必要となる条項の例:
・刑事事件:宥恕条項(「許す」旨の文言)、告訴取下げ文言がなければ処分軽減効果が得られない場合がある
・交通事故:後遺障害留保条項がなければ、示談後に判明した後遺障害の賠償を請求できなくなるリスク
・不倫問題:接触禁止条項、SNS等での口外禁止条項の設計
・金銭トラブル:遅延損害金、期限の利益喪失条項の明記
落とし穴④ ハルシネーション(架空情報の生成)
生成AIには「ハルシネーション」と呼ばれる現象があり、実在しない法律の条文や判例をもっともらしく生成してしまうことがあります。AIが出力する法的根拠は、必ずしも正確とは限りません。
海外では、AIが生成した架空の判例を裁判所に提出してしまい制裁を受けた弁護士の事例が複数報告されています。示談書に誤った法的根拠が記載されていた場合、その文書の信頼性そのものが問われかねません。
落とし穴⑤ 税務・印紙税の考慮不足
和解金の名目や金額によって課税関係が変わりますが、AIはこの税務判断を適切に行えません。また、金銭の受領を伴う示談書は印紙税法上の課税文書に該当する場合があり、収入印紙の貼付が必要です。貼付漏れがあると、本来の印紙税額の3倍の過怠税が課される可能性があります。
落とし穴⑥ 管轄裁判所・違約金条項の不備
合意管轄条項がなければ、遠方の裁判所で訴訟を起こされるリスクがあります。また、違約金条項は高額すぎると公序良俗違反(民法90条)で無効となる可能性がありますが、AIには適切な相場感がなく、過大または過小な設定をしてしまうリスクがあります。
海外ではAI文書の問題で制裁事例も
米国では、AIが生成した法律文書に関連する問題が急増しています。ニューヨークの裁判で、AIが生成した準備書面に架空の判例が複数含まれていたことが発覚し、担当弁護士に制裁が科された事例は大きな注目を集めました。
日本国内ではAI生成の示談書が直接の原因となったトラブルの報道はまだ目立ちませんが、弁護士相談サイトには「自分で作成した示談書が無効になるのでは」「示談書を交わしたのに支払いがない」といった相談が多数寄せられています。テンプレートやAIに頼った文書作成で問題が生じるパターンは潜在的に存在していると考えられます。
専門家(行政書士・弁護士)に依頼するメリット
行政書士に依頼するメリット
行政書士は行政書士法1条の2に基づき「権利義務に関する書類作成」を業として行えます。当事者間で合意内容が概ね固まっている場合に、その内容を法的に適切な文書に仕上げるのが行政書士の強みです。
行政書士に依頼するメリット:
・弁護士と比較して費用が抑えられる傾向がある
・清算条項や支払条件など、法的に重要な条項を適切に設計
・印紙税や公正証書化など手続き面のアドバイスも可能
・書面作成の専門家として職業的責任を負う
弁護士に依頼するメリット
紛争性が高い案件や、相手方との交渉が必要な場合は弁護士への依頼が適しています。弁護士は依頼者の代理人として相手方と法的交渉を行える唯一の資格者です(弁護士法72条)。刑事事件の示談など、迅速な対応が求められる場合にも弁護士への依頼が有効です。
AIと専門家の違いまとめ
比較ポイント:
・法的正確性:AIは一般的なテンプレートを出力するのみ。専門家は個別事情に応じた条項を設計
・責任の所在:AIの出力に対する法的責任は利用者が負う。専門家は職業的責任を負う
・守秘義務:AIサービスでは入力情報の取扱いに注意が必要。士業には法律上の守秘義務がある
・最新法令への対応:AIの学習データには時間的な制約がある。専門家は常に最新の法令・判例を把握
AI法務ツールの現状と限界
近年、契約書レビューに特化した専門的なAI法務ツール(リーガルテックサービス)の普及が進んでいます。これらは汎用AIとは異なり、弁護士監修のデータベースに基づくリスク検知機能やセキュリティ対策を備えています。
しかし、こうした専門ツールであっても「最終チェックは人間(法律専門家)が必要」という前提で設計されています。また、法務省が2023年8月に公表したガイドラインでは、紛争当事者間の示談書・和解契約書の作成にAIサービスを利用する場合、弁護士法72条との関係で問題となりうると指摘されています。
AIは「たたき台」の作成や一般的な法律知識の調査には有用ですが、示談書・合意書のような紛争解決に直結する法律文書の最終版を任せるのは、現時点では適切とはいえません。
よくある質問(FAQ)
示談書・合意書のご相談はSG行政書士法務事務所へ
示談書・合意書の作成は、一見すると簡単に思えるかもしれません。しかし、一つの条項の文言が将来の紛争や多額の損失につながることもあります。AIに任せきりにせず、専門家のチェックを受けることで、安心して合意を進めることができます。
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※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言を構成するものではありません。具体的な案件については、必ず専門家にご相談ください。
※記事内の法令情報は執筆時点のものです。最新の法令については、各公的機関の情報をご確認ください。
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